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’18年 花組「ポーの一族」作品感想(前半)

 


20世紀中頃。空港で待ち合わせる男女の一群。バンパネラ研究家を中心とした一団だ。
彼らは「エドガー」という名前のよく似た容姿の少年が過去数百年にわたって不思議な記録を残していることを語り、これを「ポーの一族」というバンパネラーー強いて言えば吸血鬼であると示唆する…


 

このシーンは年代や人名が羅列され、しかも正直誰がだれかを把握するのは難しい。ここは要するに、悠久の時の流れの中に、永遠の少年の存在が散見されるということさえわかればよい。…のだが、原作すら知らない夫がここでつまづかないか、少し気になった。

…しかしそれは杞憂であった。

 

「ポーの一族!」というタイトルコールにもなる台詞とテーマソングとともにせり上がる絢爛たる人々。おおお、なんときらきらしいのだろうか。力技ともいえる場面転換だが、すばらしく引き込まれる。

(あ、これなら大丈夫だ。これは良いものになる)とうっすら思ったのを覚えている。

以降、私は安心して「ポー」の世界に浸ったのだった。

 

☆ ☆ ☆

 

せりあがった舞台の一番手前にはポスターで見たエドガーそのまんまの人がバラを片手にたたずんでいる。
彼は我々観客がほうと見とれる間を待ってくれていたに違いない。ちょうど良い間で、優雅に歌い始める。「極上の美、永遠の命…」さすがに歌詞は作ったなと思っていたら、原作初期からの引用だったと後で気づいた。覚えていなくてすみません。

高らかに、力強く、しかしこの世のものならざる美しさを表現しながら歌いあげるこのシーンは圧巻である。なるほど、ミュージカル・ゴシックだ!

もっとも、後に観劇レビューをインターネットで読みあさった折り、こういった豪華で大衆的な音楽を「原作の雰囲気を壊した」とか「昭和すぎる」などと(ごく一部ではあろうが)非難している声があったが、結局全体としてのバランスは合っていたと思う。
妙にさらっとした洗練された「風」なものより、ベタで濃厚な味付けが、非現実的なストーリーやいかにも演劇的な振りともマッチしていたと思う。そういう失敗、新劇ではあるあるじゃないですか…?(小声)

アレですよ、例えていうなら宝塚は、ヌーベルキュイジーヌではなくエスコフィエなんですよ!
きっと小池修一郎というおっさんは自分が再構築した「ポーの世界」お腹いっぱい食ってほしい!と思ったんだろう。(好きだその姿勢)
それに、ぶっちゃけ「ポー」は昭和の漫画だしな!※

[ストーリーはじまる]

幼少期の主人公たち。
貴族のエドガーと妹・メリーベルは家の都合で森に置き去りにされる。
この幼児エドガーが同じ人が演じてるとは思えないくらいお子さま。未だに信じてないんだけど本当に明日海りおさんですか?とてもかわいい。

幼い二人を拾った一見優しいおばあさん(実はバンパネラの老ハンナ)。原作よりいくぶん若くがっしりとして、貴婦人の風格がある。後で調べたら元々は男役さんだったそう。

幼いエドガーとメリーベルは孤児ゆえか所在なさを常に感じている様子はあるが、人間としておおむね幸せに育つ。
その素性をこどもたちにからかわれるシーンはいかにもミュージカルといった演技で和む。
原作で主人公兄妹のつながりを象徴するアイテム「エドガーの手作り水車」もここで登場。幸せな子供時代の1エピソードとしてのみ扱われているのが原作ファンとしてはちょっと残念だが、後で見ると短い尺でよくぶっこんできたなと感心する場面だ。
ただ、この水車を欲しがるメリーベルの演技「ちょうだい!!」はなぜか吹き出してしまうものがある。編集のせいで唐突な印象を残す予告映像が頭に残っているせいもあるが、元気いっぱいの子供というよりテンション高すぎる大人に見えてしまった。

そんなちょっとドタバタにぎやかなところに、たおやかで美麗な貴婦人・シーラが現れる。
これがトップ娘役(仙名彩世さん)なのは把握していたが、よく知らないので「いよっ待ってました」というテンションではもちろんなく。

しかし、そういった無知な一般人をして、「この魅力的な女性は何者であろう」と思わせる力がこの女優にはあった。
まず歌がうまい。いわゆるミュージカル的な張りのある音圧のある歌声ではなく、優しく豊満な声。そして物腰の柔らかさ、所作の美しさ。「宝塚を見に来た甲斐があった!」と思わせる存在感。早々にファンになりました(単純)

この年上の美しいシーラにエドガーは淡い初恋を抱くのだが、残念ながらシーラはポーツネル男爵との結婚の許しを老ハンナに得るたえめにやってきたのでした…。
ここで男爵との愛を歌いあげるシーラ。後でバンパネラに変化した後のことを思うと、もっとも朗らかで明るいシーラなのが切ないですな。

そのころ、村の酒場ではビルという農夫がバンパネラに妻を殺されたと盛んに主張している。話半分の村人たちだが、バンパネラの恐ろしさについては満場一致で同意するところ。酒の席で賑やかに、熱っぽく、バンパネラであれば隣人でも殺すと盛り上がっていくという地味に情報量が多いシーン。

キャラクターもバリエーションに富んでいて「男性がいない」ことなど全然気にならない。よいミュージカルを見ている、と思った。

さて、好奇心から子供たちはバンパネラ探しに老ハンナの館にしのびこみます。なにもしらないエドガーも一緒に…。

つづく

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