めざせハートウォーミング

あかねさす紫の花(18年花組)Aパターン感想

 

♪ む~らさ~き~のー 匂える妹を にくくーあらばー

人~妻~ゆえ~にー われ恋め~や~も~


 

万葉ロマン あかねさす紫の花とは、超ざっくりいうと「大化の改新で有名な中大兄皇子が、弟・大海人皇子の妻・額田を権力で寝取る」話。 ただし、脚本的には最初にヒロイン額田が中大兄皇子に憧れていたり、それゆえにか二人の男に対する態度が曖昧だったりして、演出の仕方によっては解釈に俄然、幅が出る作品となっているようだ。宝塚では何度も再演されていて、名作と言われる。

今回のAパターンは中大兄皇子が鳳月杏、大海人皇子が花組トップ明日海りおという配役だが、公演半ばで別配役になる(Bパターン)というチャレンジングな仕様。ヒロインは一貫して娘役トップ・仙名彩世である。

 

・ざっくり感想

大変素敵でした。圧巻はやはりトップコンビの演技。大海人皇子の明日海りおさんは悲しすぎるくらい純粋な男を限りなく美しく表現。少年のとき、初対面で額田とわらべ唄を歌い、心を通わせるシーンが愛らしく、別れて後に同じ唄を娘と歌うシーンは涙なくしては見られない。ライブビューイングではあったが、大海人皇子の感情が波のように押し寄せ、言葉を失わせる。ラスト、妻を奪われ、尊敬する兄・中大兄皇子に槍を向けるシーンの所作も歌舞伎役者のように美しい。純粋ゆえにボロボロになっていく男の美学みたいなのは、バンツマの「雄呂血」を思い出させた(※あっちが純粋かは議論の余地ありだが)。

一方、二人の皇子(しかも兄弟)に求められる美姫・額田。斎姫としての能力もあるらしく、祭事を執り行い、宮中で重宝されるスーパーウーマンでもある。長年にわたるストーリーで、一番変化の多い主人公となっている。しかも、この三角関係に関する本音はセリフでは一切語らないという難しい役。仙名さんは、この女性の複雑な内面を、明日海さんに負けず、感情たっぷりに演じていた。

結局、額田という女は、身の内にわき起こる権力志向が否定できず、かといって自分の意志で夫を捨てることも選択しなかった業の深い女だったように思う。それも相当、無自覚にやっていて、実際にいたら物凄く嫌な女(笑)だが、中大兄皇子や大海人皇子にはいつまでも女神のように扱われている。しかし、唯一、幼い頃から彼女を崇拝する仏師の天比古が、時を経て、彼女からかつての輝かしく清らかな面差しが失われたことに、絶望し、嫌悪する。このとき仙名さんが天比古に「私がわからないの?」と声をかけるのだが、ここの無邪気な物言いが残酷で最高。本当に困惑してるんだよね…自分は変わってないと思っている額田の罪深さが非常に見応えがありました。

 

・ちょっと残念だったこと

額田が中大兄皇子(鳳月杏)に惹かれた理由がわかりにくい。

口頭では言ってるんですよね。少女時代に「あんな男らしくて立派な方のそばに行きたい」とか、成長してからも「圧倒的な力に抗えないものを感じていた」とか。 うーん、でもその言葉すらも空々しいというか。恋情としては惹かれている感じに描かれているように感じないんですよね。 それに、中大兄皇子から額田への愛着もあまり表現されていないと思うのです。

大海人皇子があまりに額田を熱烈に愛していて、それに対する額田の感情も実にエモーショナルな演技で…とても愛し合ってると思えるのです。「トップコンビだからラブラブにすべき」という政治的理由はさておき…もう少し中大兄皇子との間に「やむをえん」と思えるほどの恋情が表現されなかったのかと。 だって、もし額田が中大兄皇子に惹かれたのが権力欲だけだったら、中大兄皇子はピエロじゃないですか。マジで権力で弟の妻を横取りしただけだし。 額田だって、歴史的には大海人皇子が中大兄皇子の次に天皇になるわけで、ちょっと待てばよかったんじゃね的な。(ひどい)

それにプロット的に三角関係である意味がないし(これ最重要)。

このへんは’95年版を見たら解消したので、また今度書きます。

 

・他にいろいろ

<男役二番手スター・柚香光さんが演じる天比古>

仏師だけに彫りの深い顔ですね…って、あんな目立つ面構えの仏師いるのだろうか(笑)幼い頃の下げみずら姿は可愛くてナイスです。 ず~っと額田が好きで、その面影を仏像にうつすことを願っていた夢想家さん。仕事をほっぽりだして額田の近辺で仕事を見つけたりと半生をかけてストーキング…というのは冗談だが、いつまでも若さを感じる青さが、ドロドロした他の連中と好対象。

ツイッターで「アイドルが結婚したあとスキャンダルを起こしたので絶望したトップオタ」に例えられていたが…まあ…そんな感じといえばそうかな…。 遊び女だった小月という押しかけ女房に支えられつつモラトリアムを過ごしていたが、最後に額田に絶望し、作りかけの仏像にナタをいれる。 もはや立ち直れなさそうな息子に、親父がソッと金の袋を置いて去っていくのだが、たぶん普通に働かせたほうが良いと思うよ

 

音楽と演出

最高ですね! この豪勢な昭和感!!

東映動画の長編アニメーションや、モノクロ時代の時代劇映画愛好者としては、久々のご褒美でした!!

2018年にもなって、男(役)がメバリ入れてる時代劇見られるなんて感涙だよ!!

しかし、よく考えたら宝塚の芸風の確率には長谷川一夫が大きく関わっているわけで、当然といえばそうかもしれない。 見得を切るような振り付けも、凛々しいセリフ運びも、モダンダンスと日舞が合体したような美術も、すべてが天然記念物か国宝といってよい。

衣装は刺繍の縫い取りしてあってきらきらしい。鳳凰に青い照明で星をちらした緞帳もロマンを感じる。 太鼓をベースにしたプリミティブなベースにのったサウンドも歌謡曲のキャッチーさがあり、メロディラインはすぐ覚えた。 詞のもととなった和歌を、額田が即興で読み上げるシーンがあるのだが、きっと昔の人はあふれる思いや心の動きを歌に託したのであろう、と思わせる。 ミュージカルは不自然だ、などというやつがいるが、どうだろう。世界全体で見ると、喜びや悲しみを音楽にすぐのせられない民族のほうが珍しいような気もするのだが…。

ともあれ「様式美」にのっとった舞台は美しく心地よく、私には大変素晴らしい体験となったのであった。

 

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